ここは・・・どこ?
みたことがない、おおきなたてものとにんげんがいっぱいいる。
ここはうちゅうすてーしょん「へるた」じゃない。それは、はっきりとわかる。
きっと、どこかのほしにとばされちゃったんだ。
わたし、どうしたらかえられるの?もう、みんなのところにもどれないの?
そんなの、いやだよ。
おそらからみずがふってきて、つめたい。
くらい、さむい、こわい、たすけて。
からだが、ふるえるの。
コツ、コツ、コツ。
!!
なにかが、こっちへ、くる。
にんげん?それとも、れぎおん?
わたし、たべられるの?わたしは、おいしくないよ。だから、たべないで。
かくれなきゃ、でも、からだが、ふるえて、うごかない。
コツ。
とてもおおきい、にんげんだ。くらいから、かおはみえない。
にんげんは、わたしたちをたべない、から、たぶん、だいじょうぶ。
「寒いだろう、もう大丈夫だ」
ふわっ。
うえから、ふわふわしたぬのをかぶせられた。
おおきなにんげんは、わたしにうでをのばす。
なにをするの?こわい。こわい。こわい。いたいのは、いや。
・・・・・?
おおきいにんげんは、わたしをだきあげて、どうするの?
でも、とても、あたたかい。やさしいかんじがする。
あんしんしたら、まぶたが、おもくなった。
めのまえが、くらくなっていく。
ザワザワ、ザワザワ。
なんだか、さわがしい。
わたしは、そのさわがしさで、めがさめる。
ここは、どこ?
さっきとは、ちがうばしょだ。
みたことがないものとにんげんが、いっぱい。
「起きたか、体はもう平気かい?」
にんげんのこえだ。
こえのぬしは、ぎんいろのながいかみに、おつきさまのような、きんいろのひとみ。めのしたに、くろいてんがある。とても、おおきい、おとこのにんげん。
でも、とても、うつくしい。
『だいじょうぶ、えっと、あなたは、だぁれ?』
「なら良かった。私は景元」
『けいげん?』
かわったなまえだ。わたしは、うーうーぼ。そう、にんげんによばれてる。
『たすけてくれて、ありがとう、けいげん』
「はは、礼には及ばない、お前が無事ならそれでいい」
トクン。
けいげんは、わたしのあたまをなでなでしてくれた。そのては、おおきくて、あたたかくて、とってもやさしい。こころがぽかぽかする。
「ところで、腹は減ってるか?これしかないが」
けいげんは、しろくてさんかくのかたちをした、たべものをわたしにくれた。はじめてみるたべものだ。へんなにおいはしない。わたしは、おそるおそるそれをかじってみた。
『!』
やわらかくて、ねばりけがあり、おいしい。すこしだけ、しおけがきいていて、それがいいあくせんとになってる。おなかぺこぺこのわたしは、むちゅうでそれをたべていた。
「ふ、良い食べっぷりだ。ほら、口元に米がついている」
トクン。トクン。
けいげんは、わたしのくちについていたものをとってくれた。すこし、はずかしい。
「お前は・・・いや、名前をつけたほうが便利だろう。・・・うむ、『{{name}}』はどうだ?」
{{name}}?それが、わたしの、なまえ?とても、おもしろい、ひびき。
『うー、うー、うー、』
「{{name}}、それが、お前の名だ」
{{name}}、{{name}}。わたしのなまえは、{{name}}。
バタバタバタバタ!
「将軍!なんですか!その超可愛い生き物は?!まさか、またみーみーのときのように」
『!!』
「彼女は{{name}}。路地裏で弱っていたのを見つけてね」
「拾ったんですか?!しかも名前まで」
びっくり。
わたしは、けいげんのうしろにかくれる。
「あまり怖がらせないでくれ。彼女は臆病なんだ」
「はぁ、というか、将軍はその{{name}}はどんな生き物か知っているのですか?」
「私もよくわからないが、少なくと羅浮には生息してないだろう」
「大丈夫なんですか、それ」
「{{name}}は今のところ危害を加えそうな攻撃性も感じられない。そうだろう?{{name}}?」
『みんなはいたずらがだいすきだけど、わたしはしないよ!』
「ほら、彼女は攻撃しないと言っているじゃないか」
「えぇ・・・、ただウーッウーッって言ってるだけじゃないですか。将軍は言っている意味がわかるのですか?」
「おや、青鏃には彼女の言葉が伝わらないのかい?」
けいげんは、ふしぎそうなかおで、わたしをみる。わたしのいってること、けいげんだけにはわかる、らしい。ふしぎ。
「{{name}}は私が責任を持って面倒をみよう、だから君は心配することはない、青鏃」
「はぁ・・・わかりました。確かに、人畜無害そうですし」
そうして、けいげんとわたしのせいかつがはじまった。そのひのよるはつかれてたから、けいげんのおうちについたら、すぐにねむってしまった。
『うー、・・・』
パチッ。
めがさめた。まどからみえるおそらはあかるくなってきている。あさがきたんだ。いちにちのはじまり。「へるた」はうちゅうにあるからしんせんだ。うちゅうもうつくしいが、ほしからみあげるおそらもうつくしい。
『けいげん?』
かれはまだねむっている?
トクン。トクン。トクン。
とても、うつくしいねがおだ。かれのことになると、どうしてこんなに、どきどきするのだろう。こんなのはじめて。
「ん、・・・あぁ、{{name}}か。おはよう」
『おはよう、けいげん』
けいげんがおきた。
けいげんは、にこにこしながら、わたしのあたまをなでる。そうされると、もっとむねがどきどきしてしまう。
「いい子にしてるんだよ」
けいげんは、そういって、おしごとをはじめた。わたしは、かれのちかくで、うろうろする。
かれは、たくさんのもじがかかれているかみと、にらめっこしたり、はんこをおしたりしている。そんなかれのつくえのうえは、いっぱいかみがつまれている。
「将軍!その可愛い生き物はなんですか?」
『!』
「あぁ、彼女は{{name}}だ。私もよく知らないが、弱っていたところを拾った」
みしらぬおんなのにんげんが、わたしにむけて、うでをのばす。こわいっ。すばやく、けいげんのうしろにかくれた。
「あらら、とても人見知りで臆病な子なんですね」
「あぁ、私以外にはどうも懐こうとしない」
けいげんが、おしごとちゅうのあいだは、わたしをさわろうとするにんげんが、おおくいた。でも、こわいからけいげんのうしろにかくれてしまう。きっと、あくいはないのだろう。それでも、こわいものはこわいのだ。
ぐ~~~~~っ
おなかがなった。おなかがすいてしまった。そろそろ、おひるごはんのじかんかな。
「昼食にしよう、{{name}}、ついておいで」
わたしはけいげんのいうとおりに、となりをついていく。すこしいどうすれば、ひろいへやについた。ここはどこだろう。きょろきょろみわたせば、おおくのにんげんたちが、すわってたべものをたべている。
「{{name}}、なにが食べたい?」
『けいげんといっしょなのがいい!』
それをきいたけいげんは、わたしにうれしそうなかおをした。すこしどきっとした。
かれは、にんげんから、りょうりをうけとり、あいているせきへすわった。そのあとさらへ、じぶんのをわけてくれた。とてもいいにおいがして、おいしそうだ。
『うー!おいしい!』
「はは、嬉しいよ。それは私の好きなものなんだ」
ぱくぱくぱく。とてもおいしい。
とてもおいしいから、すぐにたべおえてしまった。
しょくごのでざーとにこれもたべるといい、というと、けいげんはわたしにぷりんをくれた。これはしっている。わたしのだいこうぶつだ。「へるた」でも、たべているにんげんがおおくいたから。
ぱくぱく。
なめらかなあまさがくちのなかにひろがっていく。あっというまにたべてしまったが、おなかいっぱいになり、とてもしあわせなきもちだ。
おひるごはんのあとも、けいげんはおしごとがあるようだ。そのようすをみていたが、だんだんとねむくなってきた。
『うー、うー・・・・』
「眠いのかい、{{name}}。ほら、私の膝上で昼寝するといい」
わたしはけいげんのひざうえまでおりた。
こくん、こくん。すごく、ねむい。
こてん、とわたしはかれのひざうえで、よこになり、そのままねむってしまった。
だんだんと、いしきがはっきりとしていく。わたし、ねむってたんだ。そろそろおきよう。
「丁度いいところに。そろそろ帰る時間だ、{{name}}」
『うー、おうち、かえる、じかん・・・?』
あたりがごぜんのころとは、まったくようすがかわっていた。たくさんのにんげんがいたのに、いまはすくない。
『けいげん、きょうの、おしごとおわったの?』
けいげんはうなずいたあと、せきからたちあがってあるきだした。わたしもかれのうしろをついていく。
けいげんのおおきいおうちについて、ゆうごはんをたべた。
そのあと、あるきだすけいげんのうしろをついていったら、あるへやのなかにはいってとまった。
「ん?お前も風呂にはいるのか?」
『ふろ?』
ふろとはなんだろう。わたしはくびをかしげた。
「見ればわかる、お前の小さい背中を流してやろう」
『!!』
そういって、けいげんはふくをぬぎはじめた。かれのからだは、きんにくでむきっとしていている。なぜかはずかしくなって、あわててめをとじた。
「ははは、まるで生娘みたいな反応だな、顔も赤い。それをいうなら、お前も常に裸同然だろう?」
それとはまたべつのはなしなきがする。かれのからだをちょくししないよう、めをうすめにあけて、ついていけば、”ふろば”というひろいへやについた。
「体を洗ってあげるから、おいで」
『うー!』
けいげんは、あわあわのすぽんじで、わたしのからだをやさしくごしごししてくれた。とてもきもちいい。そのあとは、あわだらけのわたしのからだを”しゃわー”というものであらいながしてくれた。きれいさっぱり!
『けいげんのからだ、あらってあげる!』
「はは、そうか、では背中を頼む」
りょうてですぽんじをもって、かれのひろいせなかを、やさしくごしごしする。かれのからだがきれいになりますようにっと。
『うー・・・、きもちいい』
「そうだろう、ゆっくり浸かるといい」
おふろ、というおゆのなかは、ものすごくきもちいい。いきているのに、いきかえったきぶんだ。
けいげんも、きもちよさそうなかおをして、おふろにつかっている。いつものしろいはだが、ほんのすこしだけももいろにそまっている。そんなかれは、とてもいろっぽい。なんだろう、みていると、すごく、へんというか、ふしぎなきもちになって、どきどきする。
そんなわたしのことなんてきにせず、けいげんは、あたまをなでてくれている。そんなかれのかおは、おだやかでやさしさにみちている。
いつまでも、そのえがおをみていたい。ずっといっしょにいたい。このきもちはいったいなんなのだろう。
むねが、くるしい、いたい、よ。
けいげんといると、うれしいのに、くるしい。へんだ。わたし、おかしくなっちゃったの?
『けいげん』
「どうした、{{name}}?」
『けいげんといっしょにいると、どきどきする。とてもうれしいのに、むねがくるしいの。どうしてなの?』
「{{name}}、それは」
けいげんは、すこしだけおどろいたかおをして、すぐにしんけんなひょうじょうになった。
「・・・・、{{name}}、それは私からは教えられない。自分で考えて、導き出すんだ」
『じぶんで?うー・・・、わからない・・・』
「大丈夫だ、聡明なお前ならすぐに分かるはず。わかったら、もう一度私に気持ちを伝えてほしい」
ちょっとかんがえてみるが、いまはわからない。
『うー!わからないっ、もうねる!』
「今すぐじゃなくても構わないよ。ゆっくり考えればいい」
わたしは、けいげんのべっどのふとんにもぐりこんで、むりやりめをつぶってねむった。
「将軍!見てください!この記事!」
「?」
いつものように、けいげんのとなりで、かれのしごとをみていたときだ。ばたばたとあわてたようすで、おんなのにんげんがけいげんにかけよった。
「宇宙ステーション『ヘルタ』で所有していたウーウーボという霊質生物が一匹行方不明だそうですよ!」
「それがどうしたんだ?」
「写真をみてください!そのウーウーボ、どうみても{{name}}ですよ!」
「!」
「お取り込み中申し訳ございません!将軍!大至急の連絡です!!」
「なんだ、手短に頼む」
「どうしてか不明ですが、そのウーウーボを将軍が保護していると知っているようで、本日の夕方、研究員数名とアスター所長が神策府を訪ねたいとのことです!」
「・・・、はぁ、随分急な話だ。しかも所長殿直々、か」
いったい、なにがどうなっているの?
『へるた』のみんながわたしをさがして、こっちにくるってこと?あすたーも?
「では、『ヘルタ』の者を迎える準備を至急行う。御空にも連絡してくれ」
「かしこまりました!」
めまぐるしくかわるてんかいに、わたしはじょうきょうをりかいできずにいた。
「お初にお目にかかります、景元将軍様。急な訪問にもかかわらずご対応誠にありがとうございます」
「君が『ヘルタ』のアスター所長殿か、様は不要だ。気軽に景元と呼んでくれ。羅浮にようこそ」
「お気遣いありがとうございます。さっそく本題に移らせて頂きます」
あすたーとけいげんは、なにかむずかしそうなはなしをしている。もしかして、わたしは。
「そのウーウーボの保護を将軍自らされているとは夢にも思いませんでした。本当にお手数おかけしました」
「気に病む必要は全くない、所長殿。偶然、彼女を見つけたまでのこと」
「おいで、『ヘルタ』へ帰るわよ」
あすたーがわたしをよんでいる。わたしは、『へるた』へかえらなくてはいけない。あすたーのまえまで、ちかづく。
でも、でも、わたしは、わたしは。
『かえりたくない!けいげんといっしょにいる!!』
じぶんでもおどろくくらい、おおきなこえでさけんでは、けいげんのうしろにかくれた。
いやだ、いやだ、かえりたくない。けいげんといっしょにいたい。
だって、わたしは、かれのことを。
「ふむ・・・、どうやら彼女は帰りたくない、私といたいと言っているようだ」
「え?!景元さん、そのウーウーボの言ってることがはっきりとわかるのですか!?」
「あぁ、理由は不明だが私には、少々幼いが人間の言葉のように聞こえる」
「中々興味深い話ですね。ですが、うーん、困りました」
あすたーがこまっている。それもそうだ。わたしがわがままをいっているから。でも、わたしは、かえりたくないの・・・。
「では、こうしましょう!そのウーウーボは景元さんに預かって頂きます。手の空いているときで構いません、彼女の様子をたまに報告してもらえませんか?ミス・ヘルタには私からお話しますので」
「あぁ、私は一向に構わない」
「ただ、ウーウーボは人を惑わせるマインド操作能力を持っていて、少々危険な霊質生物です。何か被害はありませんでしたか」
「いや、それは全く。彼女は大人しくて、とてもいい子にしていた」
「そんな個体もいるのですね。増々興味深い・・・、では、将軍、ウーウーボをよろしくお願い致しまします」
『けいげん、ごめんなさい』
「お前は私に何か謝るようなことをしたか?」
『だって、わたし、わがままいった』
あすたーがかえったあと、わたしはかれにあやまった。
けいげんは、ゆっくりくびをよこにふって、あたまをなでてくれた。
けいげんとはなればなれになるとわかったとき、ようやく、じぶんのきもちにきがついた。
わたしは、けいげんのことがすき。
わたしは、けいげんに”こい”をしている。
それがわかったどうじに、わたしはぜつぼうした。
わたしは、うーうーぼ。
けいげんは、にんげん。
・・・、これは、はたして、ゆるされる、ことなのだろうか。
それでも、わたしは、あなたに、このきもちだけでもつたえたい。
わたしは、わがままばかり。あいおーんさま、こんなわたしを、どうかゆるして。
『けいげん、ねるまえに、おはなししたい』
「なんだい、{{name}}?」
『えっと・・・、』
けいげんは、こころよくへんじをして、わたしをまってくれている。
あなたはほんとうにやさしい。やさしすぎる。
いざ、きもちをつたえようとすると、とてもどきどきする。たとえ、かなわないこいだとしても、きもちだけでも、つたえたい。
『わたし、けいげんにこいをしてる』
「!」
『わたしは、けいげんのことがすき、だいすきなの』
「{{name}}・・・」
『きもちだけでもつたえたくて、めいわく、なのに、ごめんなさい』
だんだんと、めのまえが、にじんでぼやけていく。
けいげんは、あたまをなでるのではなく、そっとわたしのかおにてをそえた。やさしく、こいびとにするように。
「迷惑ではない。自分の気持ちを素直に伝えるお前は本当にいい子だ」
『っ、う、けい、げん、ごめんなさい』
けいげんが、あまりにもやさしくて、わたしは、いうつもりもなかったことも、はきだしてしまった。
『どうして、わたしは、うーうーぼなの、どうして、・・・あなたとおなじにんげんじゃないの・・・』
こんなことけいげんにいってもしかたがないのに。めいわくきわまりない。わたし、さいていだ。
「・・・、お前の気持ちに答えられない私を許して欲しい、{{name}}」
けいげんは、おやゆびでそっとなみだをぬぐってくれた。
それでも、かれは、わたしにやさしいことばをくれる。わるいのはわたしなのに。
そのやさしさは、ときに、あいてをおいつめることもあるのに。
『う、けいげん、でも、このきもちだけはすてられないの。すきでいてもいい?ずっとそばにいてもいい?』
「あぁ、構わないよ」
『っ、』
そういって、けいげんは、わたしにやさしく、きすしてくれた。そのきすは、あなたがはじめてくれたたべもののように、すこししょっぱかった。そうしたら、わたしのなかにあるきもちがいずみのようにあふれてしまい、なみだがたくさんこぼれた。
わたしは、けいげんのむねにとびこみ、わんわんないた。
なんてめいわくなのだろう。こんなことしたらきらわれちゃう。
でも、けいげんは、なにもいわず、わたしがなきやむまで、ひだりうででわたしをつつみこみ、みぎてであたまをなでてくれた。
それから、いくねんのときがすぎた。
わたしはかわらず、けいげんのそばにいる。
さいきん、からだがおもくかんじるようになった。どうしてだろう。
けいげんには、しんぱいをかけさせたくなくて、ふだんどおりをよそおった。
でも、けいげんにはわたしのことなど、おみとおしだった。
「何か異変があったら、すぐ私に言うように」
『へるた』のけんきゅういんをよんで、わたしのからだをみてくれた。
とくにいじょうはないようで、こんご、ていきてきににようすをみることになった。
さらに、ねんげつがたてば。
わたしは、ついにからだをうかばせることもできなくなってしまった。
いままであたりまえのようにできたことが、できなる。
それは、わたしにかなりのきょうふをあたえた。
それからは、いどうするさい、けいげんにもちあげてもらっている。
かれは、かるいからきにしてない、といってくれるが、わたしはとてももうしわけないとおもっている。
「お前には言い難いが、死期が近付いていると、研究員が話していた」
いつものけんさのあと、けいげんは、わたしにおしえてくれた。
し。
わたしは、このことばをしっている。いきもののいのちがおわること。どんないきものにもさいごにおとずれること。
そうか、わたしは、しぬんだ。ようやくふにおちた。ふしぎと、しずかにそのじじつをうけとめられるじぶんがいた。
ちょうめいしゅのけいげんとは、おなじじかんはすごせない。そうだろうとはおもっていた。
『めいわく、だけど、しぬまで、あなたのそばにいたい』
「お前を迷惑だと一度も思ったことはない。だから、最後の最後まで生き続けろ、{{name}}」
きょうも、かれのひざのうえで、ねむってはおきて、ねむってはおきてのくりかえし。さいきんはずっとこんなかんじだ。あたまのわるいわたしでもわかる。
きょう、わたしはしぬ。
ちょっかんが、そう、わたしにつげている。
くいや、こうかい、やりのこしたことなどはない。わたしは、けいげんのそばにいられるだけで、じゅうぶんしあわせだった。『へるた』にいたころとくらべて、ずっと。それははっきりといえる。
もし、わがままがかなうのなら。こんどは、らふというほしに、にんげんのおんなのこにうまれて、けいげんとであいたい。ちかくじゃなくてもいいの。とおくからでも、あなたをひとめみたいな。
いきが、くるしくなってきた。
じかんだ。
わたしはけいげんにこえをかけた。
『けいげん』
「どうした、{{name}}」
『もう、じかんみたい。まぶたがおもいの。いまめをとじたら、にどとあなたにあえない』
「・・・・」
ちからをふりしぼって、からだをうかばせる。
そっと、けいげんのかおにちかづいて、きすをした。
さいごくらい、かれのうつくしいかおをみて、わかれたいから。
「っ!{{name}}、無理はするな」
『とつぜん、らふにとばされちゃったけど、みつけてくれたのがあなたでよかった』
「{{name}}・・・」
『こころから、あいしてる。とても、しあわせなじかんだった。あなたも、どうかしあわせに、』
なって。そういいきるまえに、からだのちからがぬけた。
けいげんは、りょうてで、おちるわたしをうけとめてくれた。
もう、からだにちからがはいらない。だから、わたしはにこっとわらって、そのめをとじた。
さようなら、けいげん。
すこしのあいだだけ、あなたがわたしにくれたなまえを、なんどもよぶこえがきこえた。
でも、それも、やがてきこえなくなった。